2021/11/02

令和3年度文化勲章受章のお知らせ

この度、絹谷幸ニは文化勲章を受賞いたしました。展覧会の開催、受賞者との交流、関連記事を掲載させて頂きます。

【大阪/絹谷幸二 天空美術館】
2021年12月17日(金)より文化勲章受章・開館5周年記念特別展「永遠にあたらしい!! 人類最古の壁画技法 アフレスコ」を開催いたします。
https://kinutani-tenku.jp/topics/

○ 長嶋茂雄氏との共作『新世紀生命富士』(2001)

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○ 牧阿佐美氏との共作『飛鳥 ASUKA』(2018)

牧阿佐美氏との共作

https://www.ambt.jp/past2018/asuka/

(関連記事)
◼️毎日新聞 2021年10月26日(抜粋)
「これ以上の幸せはない」

 「子供の頃から絵が好きで、自然にこの道に入りましたが、これ以上の幸せはありません」。穏やかに来し方を振り返った。

 奈良・興福寺そばの歴史が息づく街で育った。東京芸術大で油画を学び、イタリアで古典画、アフレスコ画の技法を深めた。特徴は、心が沸き立つ華やかな色彩。エネルギーあふれる画面には、歴史と現代、聖と俗など相反する要素を包み込む壮大な世界が広がる。

 「芸大入学時に言われたのは『絵はうまいだけではだめだ。哲学がないといけない』ということ。戦争、政治、経済......。西洋の油絵は、人間を知ろうとする学問なのだと気づきました」。描く行為を支えてきたのは、観察し、思索することの積み重ねだった。

 「絵は船のへさきのように、明るい方面へと切り開く役割がある」と信じる。だからこそ、後進の育成や子供に絵の楽しさを伝える活動にも力を注ぐ。「受章に恥じないように、自分の絵もしっかり描かないと。山ほどやることがありますね」

◼️ 日本経済新聞 2021年10月26日
「文化勲章の絹谷幸二さん 安住せず色彩に身浸したい」

イタリア・ベネチア仕込みのアフレスコ(フレスコ畫)の技法で、今なお色鮮やかな獨自の絵畫を描き続ける。「年を重ねても心を乾からびさせないよう、色彩に身を浸していきたい」。受章も新たな転機ととらえ「自ら脫皮してさらに前に進むための原動力にしたい」と語る。

アトリエに閉じこもることなく、公共建築の壁畫や天井畫の製作、後進の指導など幅広い活動で知られる。なかでも教育に力を注ぎ、若手芸術家の育成を目的に「絹谷幸二賞」を創設。文化庁主催の「子供 夢・アート・アカデミー」に協力して各地の小中高校などで長年絵を教えてきた。

子どもらには「十人十色、自分だけの絵を描こう」と呼びかける。「いま新しい発想や発見が生まれにくくなっているのは、想像する力、夢見る力が失われつつあるからではないか」と危懼するためだ。「未來をしょって立つ世代にこそ、個性をきらめかせる大切さを伝えたい」。コロナ禍もオンラインで子どもに絵を描く楽しさを教えた。

「安住」は好まない。「畫家としての最終コーナーに向かいますが、これからもエンジンをふかしロケットを飛ばしますよ」

◼️ NHK 奈良ニュース 2021年10月26日
「文化勲章に奈良県出身で洋畫家の絹谷幸二氏 東京芸大名譽教授」

今年度の文化勲章の受章者に奈良県出身の洋畫家で東京芸術大學名譽教授の絹谷幸二さんが選ばれました。

絹谷幸二さんは奈良市出身の78歳。
東京芸術大學大學院ではヨーロッパの古典的なフレスコ畫の技法を學びました。
獨特の鮮やかな色彩を生かした明るくエネルギーにあふれる作品が特徴で、平成10年に開かれた長野オリンピックの公式ポスターの原畫を製作しました。
また、「天の岩戸(あまのいわと)」や「天孫降臨(てんそんこうりん)」など古事記の神話をテーマにした數々の作品も手がけています。
東京芸術大學や大阪芸術大學で教べんをとって後進の育成にも盡力したほか、近年は文化庁の事業の一環で、全國の學校で特別授業を行い、絵を描くことの楽しさを児童や生徒に直接伝えています。
絹谷さんは「とても喜んでいます。絵を描くことは絵に心を入れることです。子どものころから身近に仏があり、觸れることができる奈良で生まれ育ったことが、『絵を描く』面で生かされたと思っています。初心に戻った気持ちで取り組んでいますが、いよいよこれからが勝負だと思って頑張ります」と話していました。

◼️ 朝日新聞 2021年10月29日
『ともにつくり、触れた長嶋茂雄さんの感性 文化勲章受章の洋画家』

今年の文化勲章がプロ野球巨人終身名誉監督の長嶋茂雄さん(85)ら9人に贈られることが26日、発表された。受章者の中には、長嶋さんと親交のある洋画家の名前もあった。絹谷幸二さん(78)。2人はかつて、「新世紀生命富士」というタイトルの油絵を共同制作している。

「長嶋さんがキャンバスと向き合う姿は、バッターボックスに入るときの動きと一緒だったんですよ。手の先をクルクルと回しながら、ね。そして、柔らかい感性が、線や面となって現れてくるんです」
 絹谷さんから当時の話を聞いたのは2012年。共同制作の様子を懐かしみ、笑顔で再現してくれた。
 2人の共同制作は長嶋さんが巨人の監督だった01年。世界の有名人の絵画を集めたチャリティーイベントに長嶋さんも出展することになり、絹谷さんから指導を受けた。制作期間は約3週間。長嶋さんが絹谷さんのアトリエに通って筆をとったという。

完成した「新世紀生命富士」は、真っ赤な太陽と、日差しを浴びた富士山が共存するエネルギッシュな作品だ。
 エネルギーに満ちた独自の画風で知られ、1998年長野五輪の公式ポスターの原画を制作した絹谷さんと、絵画好きな長嶋さん。2人の交流は以前からあったという。長嶋さんが巨人の監督に復帰して2年目でセ・リーグ優勝を果たした94年秋には、絹谷さんが2枚の絵画を贈っている。長嶋さんが大好きな富士山や太陽がダイナミックに描かれた作品だという。

 「その絵から気をもらった、と長嶋さんは言っていました。作品のエネルギーを体内に取り込む。そういうことができる人なんです」
 巨人は日本シリーズで西武を破り、長嶋監督は念願の日本一監督になった。
 長嶋さんと付き合っていて絹谷さんが驚いたのは、その眼力の確かさだという。
 「ものを見るのは目ではない。目というレンズを通して脳みそが見ている。その消化スピードが素晴らしいんです。長嶋さんの野球をカンという人もいるけど、それは違いますよ。相手の動作などを独特の感性で、コンピューター以上の速さで解析することができるんです」

文化勲章の親授式は11月3日、皇居である。
(編集委員・安藤嘉浩)

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